Que tout l'enfer fuie au son de notre voix...
歌劇(オペラ)は一部の例外はありますが、だいたい 8 割以上が悲劇で、登場人物の死などで暗く終わります。一方喜歌劇(オペレッタ)は文字通り、まず間違いなくハッピーエンドで楽しく聴けるお話です。
ワルツ王として有名なヨハン・シュトラウス二世は、1870 年頃相次ぐ身内の不幸に遭遇します。失意のどん底で、ワルツやポルカの筆が進まなくなったヨハンに、妻ヘンリエッタが言いました。
「元気出しなさいよ。楽しい話を考えながら、楽しい曲を作ればいいじゃない。あなた、オペレッタを書いてみれば?」と。・・・・
彼はこの一言でハッとしました。こうして彼は、自分自身が悲しみから立ち直るためだけではなく、聴衆も気軽に聴けてしかも底抜けに楽しいオペレッタを立て続けに作曲したのです。その中の最高傑作がこのオペレッタ「こうもり」です。
<ファルケ博士からのご挨拶>
私はドクター・フリッツ・ファルケ。この街では誰一人知らないものは無い公証人です。数年前、銀行家のアイゼンシュタインの家でおこなわれた仮面舞踏会で、アイゼンシュタインは「蝶」に、私は「こうもり」に扮しました。パーティーの心地よい酒とワルツに酔いしれ、帰りの馬車の中ですっかり酔いつぶれた私は、「こうもり」の姿のまま街に放置されたのです。翌朝、なさけない「こうもり」の格好をしたまま皆の笑う中を歩いて帰るハメになってしまったのです。このときから私は「こうもり博士」といやなあだ名を頂戴する事になってしまいました。
さて、今日は大晦日。「こうもり博士」こと私は、アイゼンシュタインに仕返しをするため大掛かりな芝居を計画したのです。お金はありますが生活に退屈しきっていて、何か面白い事は無いかといつもぼやいているロシアのプレイボーイ・オルロフスキー公爵の舞踏会が開かれます。私が司会をするこの舞踏会で大いに知恵をしぼり復讐してやります。今夜の趣向は面白い事請け合いです。是非皆様も協力してください。
アイゼンシュタインは税務署役人に暴行を働き、今夜から留置所行きとなりました。アイゼンシュタインと、昔の恋人から浮気を迫られて、まるきりその気が無いでもない妻ロザリンデとが、ファルケ博士からお互いに内緒でオルロフスキー公爵の舞踏会へ誘われます。留置場に行くのに夜会服を着て行く夫をいぶかしく思いながら、ロザリンデも暫くの別れに悲しそうな表情を作りますが、お互いに内心はうきうきしています。
大晦日の舞踏会にはファルケ博士から招待された人たちが次々にやってきます。そこへ仮面をつけてハンガリーの伯爵夫人と称するロザリンデが登場します。仮面をつけているハンガリー公爵夫人を自分の妻とは気付かず、女好きのアイゼンシュタインは口説き落とそうとします。その時おきまりの口説きの道具「懐中時計」を彼女に取り上げられてしまいます。パーティーは大いに盛り上がり、やがて新年の朝6時の鐘が鳴ります。アイゼンシュタインはいやでも留置所に出頭しなくてはなりません。その留置所で、妻の浮気がばれてしまうのですが、すかさず彼女が「懐中時計」を取り出して逆襲します。夫婦喧嘩の舞台がそろったところで、ファルケ博士が登場し舞踏会で起こった事は全て自分が仕組んだ仕返しだったと種明かし。すべてハッピーエンドでめでたしめでたしと言う他愛も無いお話ですが、さすがウィーンの香りと楽しさに溢れる作品となっています。
と、これが原作のあらすじですが、今回の富岡健演出・滋賀男版「こうもり」のお話は、舞踏会の場面でフィナーレを迎えるため、少し結末の種明かしの場面の演出を変更いたしております。
どうぞお楽しみに・・・・?
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