Que tout l'enfer fuie au son de notre voix...
中部ヨーロッパの小さな王国カールスブルクの若き子カール・ハインリッヒは厳格なカール七世を父として育ちました。彼をとりまくカールスブルグ宮殿のすべての生活は、儀式一点張りの因襲と沈滞の牢獄でした。若き日の喜びを知らずして育ったハインリッヒが学校を修めるために教育掛りのユットナー博士を伴ってハイデルベルグの大学へ来た時、彼は初めて溌剌たる人生を味わったのでした。ハイデルベルグは学生の都、自由と歓喜と青春の輝く街でした。彼が下宿としてえらんだリューダー老人の家には美しい乙女ケティーがいました。二人はたちまち初恋に結ばれていきます。そしてユットナー博士は情味あふれる思いやりから彼らの恋に干渉しなかったのです。緑したたるネッカー河のほとりに、百花乱れる牧場の野に、楽しい囁きの幾月かが夢のようにすぎていきます。だがケティーは若きハインリッヒと到底結婚できる自分でないことを知っています。その彼女が恐れていた日がやってきました。カール七世重病の知らせにハインリッヒが城へ帰ってみれば、父親はすでに彼の許嫁たるべき姫を取り決めていました。彼は再び昔の宮殿生活に戻らなければならなかったのです。せめて今一度、思い出の地に別れを告げるべくハインリッヒがハイデルベルグを訪ねた時ケティーはまだ彼のことを思いつづけていたのです。二人の間には切ない別れの接吻が交わされました。数日後、ハインリッヒの結婚は伝えられ、ケティーの晴れやかな歌はそれ以来聞かれなくなったのです。このような甘くも悲しい恋物語です。
戯曲と小説アルトハイデルベルグでは内容や名前が少々違っていますが、大きなストーリは変わりません。小説アルトハイデルベルグでは王子の家庭教師であるエンゲル博士が王子に「人生はうつろいやすいものだから大いに愉快にやりなさい。」そして「いつまでも若くていらっしゃい。現在(いま)のままでいらっしゃい。もし、彼らがあなたを違った風にさせようとしたら、その時は敢然と戦ってください。いつまでも人間でいらっしゃい」と忠告しています。
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